午前は伊豆石についての講義を受け
matsuzaki2030-blog.hatenablog.com午後は石材として使用されている伊豆石や石切り場を実際に見るフィールドワークへ。
まずは、松崎町の伊豆石について、町の自然や歴史に詳しい渡辺攻さんから講義を受けました。
フィールドワークのコースは
環境改善センター→ギャラリー喫茶丸平→漁具倉庫(丸高)→株式会社丸高TT→(長八美術館からバス)→室岩洞→岩地海岸→海光苑→環境改善センター
となります。
なんと渡辺さん、この日のためにスタート地点となる環境改善センターに伊豆石を持ってきてくださったのです。
まずは松崎町の中心部を散策。町の中に伊豆石の建造物は点在していますが、八木山といった山の中の地区にも存在しており、どうやって石材を運んだのかと思うとのことでした。
環境改善センターからすぐ、海岸沿いにある「ギャラリー喫茶丸平」さんは、かつて氷の倉庫として使われていた伊豆石の石蔵。現在は1階はカフェ、2階はギャラリーとして利用されています。
なまこ壁の蔵が立派な旧依田四郎邸は、現在「浜丁」という名前で土日はカフェとして利用されています。かつて大火があった際、この蔵だけが残ったとのこと。周辺の塀は景観計画の運用により、ブロック塀の外側になまこ壁を作っているそうです。
ギャラリー喫茶丸平さんの対岸には、松崎町で林業や農業を営む丸高ティーティー株式会社さんが、定置網漁をおこなっていた際の伊豆石で造られた漁具倉庫があります。
石を切り出す際の「ノミ」の跡がないことから、機械で切り出されたものと推測されます。また、石の中の「礫」の感じからこの辺りの石ではないのではとのことでした。風化を防ぐためかFRPで補強されていました。
松崎ブランドの「栄久ぽんかん」などを栽培している丸高ティーティー株式会社さん。その作業場や倉庫が立派な伊豆石造とのことで許可を得て見学。(個人のお宅ですので通常は入ることはできません)屋根の形状や樋の形状は西洋建築の様式であり、使われている石材は、この付近の石ではない安山岩系の伊豆石で、首都圏にあるような西洋建築、銀行とかに使われていたようなレベルのものであるとのこと。みなさん興奮していました。
長八美術館からバスに乗って室岩洞へ。
伊豆半島には多くの石切り場の跡がありますが、室岩洞は唯一、観光用に中を歩いて見学ができる施設として整備されています。
見学前に渡辺さんから見どころとして、石を切り出した「ノミ」の跡を見てほしいとのこと。まずは縦切りで掘って先行し、ある程度の高さが出たら、横切りで下に向かって掘っていく跡がはっきりと見えます。また、崩れないように柱を残しながら掘っているところにも注目してほしいとのことでした。
中に入っていくと…
坑道を順路に沿って進んでいくと外へ。ここは切り出された石を海岸に運ぶための「石引道」で、進んでいくと目の前に海が見えます。ここから崖の下、石を船に乗せるために引きずり落した滑り台のような痕跡が残っています。
次にバスに乗って岩地海岸へ。
かつて伊豆石を使用して造られた防波堤の波止めの石積が海岸沿いに残っています。波・風よけのため強固に造られているため築城と同じような積み方になっています。
使われている石は「長磯石」と呼ばれる石で、海の向こうに見える萩谷崎から切り出されたものです。
波止めの石積を見ながら、今日の最終目的地である海光苑(阿波屋)さんへ。
阿波屋さん所有の古文書には、御用石の切り出し書状が記されています。江戸時代、御用石として伊豆石を切り出し、江戸に運搬していたこの地。阿波屋さんは、幕府から旗を交付されており、手漕ぎ船で千石船のところまで行って、石を包んだ旗を投げると旗を投げ込まれた千石船は荷物をおろして、石を運んでいくといった流れになっていたそうです。
海光苑のご主人からは、岩地の歴史についてもお話を聞きました。
江戸時代、風待ち港だった岩地には、江戸や大阪の情報がたくさん入ってきたこと
岩地の名のとおり、井戸を掘っても岩盤で、水の確保に大変苦労したが、地引網漁が盛んだった時期に、行政に頼らずに独自の上水道を作ったこと
加山雄三さんの映画「太陽が呼んでいる」の撮影をきっかけに、東洋のハワイと言われ夏の浜は賑わい、当時60軒くらい民宿があったが、現在は11軒まで減ってしまったこと などなど。
地形が生活や産業を作ってきたので、これからも白く美しい岩地の浜を大事にしていく、ということでした。
環境改善センターに戻り、参加した方全員から本日の感想を聞きました。この日の参加者の半分は高校生。伊豆石について自主的に研究をしている静岡県立韮山高等学校の化学部と文芸郷土研究の生徒さんと顧問の先生が参加してくれました。化学部は石の組成といった科学的側面から、文芸郷土研究部は文化的側面から伊豆石を研究しており、3/8に伊豆市で開催する伊豆半島探究学習サミットで発表予定です。
座学とフィールドワークで伊豆石をみっちりと学び、その魅力を再確認した一日でした。