20240628 松崎高校探究学習サポート② 1年生講義

「うさはかせ」こと静岡大学小山先生の講義

松崎高校の探究学習「西豆学」のサポートをおこなう2030松崎プロジェクト。前期は、1年生は講義、2年生は本プロジェクトのチーム活動への参加という形でサポートします。
6月28日の1年生の講義は「ジオパーク」をテーマに、静岡大学の小山真人先生とジオガイド協会会長の仲田慶枝さんが講師を務めました。

NHKブラタモリ」での案内でお馴染み、うさはかせの愛称で親しまれている小山先生の専門は火山学。伊豆半島ジオパークの認定に尽力をされました。学生の頃から松崎町には調査で来ていたという小山先生からは、「松崎の大地から未来を考える」というタイトルで
1 地理空間情報システム(GIS)・3次元点群データ・デジタルツイン
2 GISで考える松崎の地形と防災
3 松崎の大地とジオパーク
と大きく3つに分けたテーマで講義をしていただきました。

「なぜ、松崎にスタバがないのか?真剣に考えたことはありますか?」という問いから授業はスタート。

 

松崎にスタバをつくるには??

高校生との間で度々でてくる「松崎にスタバが欲しい」という話題。伊豆半島には三島以南にスタバはない。国土交通省が公表しているサービス施設の立地の人口規模において、スタバは人口27万5000人を超える自治体であれば存在確率が80%となると記載されている。松崎の人口6千人切っており、銀行の立地も危ない状況。人口が少ない→お客が少ない→採算が取れないのが現実。
それでもスタバが欲しかったらどうするか?人口を増やすのは難しい。観光客を増やせば?と考えるかもしれないが、都会からの観光客がわざわざ松崎でスタバに行かない。スタバはチェーン店なので、よそから運んできたものを売ってよそにお金がいくという仕組み。
では、自分たちでつくるのはどうか?実際に、鳥取では「すなば珈琲」という地域独自のコーヒーショップを立ち上げた例がある。

AIに描かせた「松崎桜葉カフェ」のイメージ、桜葉フラペチーノが美味しそう

(ここで小山先生がAIに描かせた「松崎桜葉カフェ」のイメージ図を披露)
松崎独自のカフェをつくるには何をすればよいのか、どんな技術が必要か、松崎だけでなく賀茂地域の強みと弱みを知ることが必要。
多くの偉人を輩出した私塾「三余塾」の創始者である土屋三余、北海道帯広を開拓した依田勉三など色々な分野で活躍した人を輩出した土地柄。
高速ネット回線とIT技術があればどこでも仕事ができ、自然の環境の中でお金を稼ぐことができる。

地理空間情報システムと点群データ、デジタルツイン

地理総合が必修となり、地理空間情報システム(GIS)をみなさんはこれから習うと思う。地図を重ねて、情報の分析ができるもので、例えば災害の想定を計算し、被害人口を計算するといったことができる。
3次元点群データについては、スマホでもLiDAR(ライダー)というレーザースキャナを搭載している機種があるが、レーザーで物の色と距離を測り、そこからデータを採って3Dモデルをつくることができる。飛行機に乗せたLiDARから計測した地形の点群データを静岡県は全国に先駆けて公開しており、無料でダウンロードできる。観光、災害、自動運転、環境保護など色々なことに利用できるが、使っている人は少ない。
デジタルツインとは、現実世界の情報をもとに、バーチャルな世界を再現する技術のこと。バーチャルな世界での疑似体験を色々な分野のシミュレーションに使うことができる。国交省が公開、PLATEAUというプラットフォーム。なぜか沼津での整備が進んでいる。津波が起こるとどの建物がどれくらい浸水するかといったことをビジュアルで確認することができる。

デジタルツインにより、津波の被害のシミュレーションがここまでできます。

2021年の熱海の土石流があった時も、すぐにドローンを使って計測したことで、今後どれくらいの危険があるのかが分かり、対策ができた。
松崎町の中心部は平野で平らに見えるが、データから細かく高度を見えるようにすると、扇状地や自然堤防、砂嘴といった高くなっている位置が分かり、津波の避難場所の検討に利用できる。

松崎の大地とジオパーク

普段何気なく見ている地形や風景にはすべて意味があり、その意味を読むことができれば、世界が違って見えてくる。そうするとみんなに教えたい、旅行客にも教えたくなる。
伊豆半島は昔は海底火山で本州に衝突したことから、例えば西伊豆一色の枕状溶岩など、西伊豆・松崎は海底火山の時の地層が山の中によく見える。堂ヶ島や下田の恵比寿島といったかつての海底火山がつくる美しい場所があり、世界中から海底火山の研究をしている人が来ている。烏帽子山や千貫門といった「火山の根」もある。
陸上火山の時代の火山だと松崎には蛇石火山がある。この麓に石部の棚田があるが、なぜ山の上に水が必要な水田があるのか?これは、下に隙間がない海底火山の地層、上に隙間が多い陸上火山の地層があることから山の麓に湧く湧水を利用しているもので、同じく湧水を利用しているのがワサビ。ワサビ栽培については、世界ジオパークの審査員が訪れるくらい自慢ができる。

普段何気なく見ている地域の風景、その意味を知ればみんなに教えたくなるはず!

こうした地域資源を世界中に「自慢する」仕組みがジオパーク。自然だけでなく歴史、人物、教育、地面の上に乗っているものすべてがジオパークの構成資産。ガイドになる、商品開発したい、芸術作品をつくりたいといった住民主体の盛り上げ方ができ、かつては松崎高校がジオサイトの清掃活動をしていた。来年、ジオパークの継続審査があるのでがあるので、ぜひ皆さんの力を借りたい。
みんなで未来の素敵な松崎をつくるためにいろいろな技術を身につけてほしい、という
メッセージで小山先生の講義は締めくくられました。

松崎高校の先輩たちによる「枕状溶岩のできかた」紙芝居の披露

 

伊豆半島ジオパークの魅力を伝えるガイドツアーを提供している「伊豆半島ジオガイド協会」の会長を務める仲田さん。ジオパークと観光、サステナブルツーリズムとエコツーリズムの具体例の紹介などを講義いだたきました。

サステナブルなツアーとは?ジオガイド協会会長仲田さんの講義

ジオパークと観光

伊豆半島には200以上のジオの見どころがあり、自然だけでなくここに住む人がどんな暮らしをしていきたのかといった新しい伊豆の楽しみ方を提案できるのがジオパーク
伊豆半島にはジオサイトの見どころが分散しているが、大室山や城ヶ崎海岸修善寺温泉に行く人が多く、交通網(電車)の整っていない西伊豆方面はそこが課題。
みなさんはジオ学習を受けてきていると思うが、ジオパークの視点をツアーに入れることにより、地形や科学に対する興味を持つことで、今までと違った伊豆に見える。そうなると地域に住む人が自分の住んでいるところを見直し、もっとみんなに来てほしいと思うようになる。

池代のわさびがなぜ美味しいのか?を体感するツアー

サステナブルツーリズムとは、地域独自の魅力を発信し、観光客がその価値を楽しむ観光。エコツーリズムは、その中でも地域の環境や住民に配慮した観光。ほぼ同じ意味に使われている。持続的な観光を目指し、リピーターを増やすには、ワクワク体験、地域住民との交流を心がけ、その全体がストーリーになるようなツアーの組み立てが必要。
例として、松崎町池代のわさびツアーを紹介。池代のわさびが美味しいことの理由は?という謎解きをしながら歩き、収穫体験・試食をおこなうツアー。わさびは生長に厳格な自然条件がそろう必要がある。大量のきれいな水、年間通して水温が一定でなければならない。そのため川の水ではなく、湧き水をわさび田に引くのだが、地層の違うところから水が湧くところを実際に見ることができる。
地域の理解を得るために、わさび農家さんと何回も話し合いをし、時間をかけてこのツアーをつくってきた。外から人が来ることで、自分たちの住んでいるところが素晴らしいところだということが分かる。
楽しい地域が増えれば、移住してくる人がいるかもしれない そんなツアーづくりを目指している。

自然や地質だけではない、そこに生きるすべてのものがジオパークの構成資産です。

このブログでも度々活動を紹介しているツーリズムチーム、三余塾チームの活動を紹介して、授業は終了。小山先生、仲田さん、ありがとうございました。